お中元を楽しみながら学ぶ
日本では銀行の給料が他の業界よりも高く、けしからんと批判されているが、イギリスではそのような声はない。
日本なら、入社の年次によってどの程度の給料を貰っているか見当がつく。
ボーナスにしても、日本の査定方法ではあまり差がつかないから、同じ会社の同じ年齢層の社員の年収には大きな開きはない。
しかし、シティは違う。
大学卒業したての全くの新人は別として、一定の経験を積んで他社から移って来た社員は、入社前の交渉の席で、給与の額も話し合われる。
この時、年齢はほとんど考慮されない。
その人の能力や実績だけがものをいう。
何度かの交渉の結果、双方が合意し、契約書にサインすれば、契約成立である。
そして、イギリスに限らず欧米の金融界はどの企業も、こうした途中入社組で成り立っているので、年齢からその人の給料を推測するのは難しい。
第一、「途中入社」などという観念自体がなく、従って、「途中入社」にあたる英語そのものがない。
シティと一口にいっても、年収は人によって千差万別である。
現在、投資会社を経営するG・ハンズ氏が、まだNインターナショナルに勤務していた九七年当時、私が日本の企業にいた若い頃は、同期生同士が居酒屋で、「お前、今度のボーナスどうだった?」とか、「査定はどうだった?」「いくら昇給した?」とかざっくばらんに聞き合ったものだが、シティでそのようなことを話題にする人はまず一人もいない。
給与とボーナスの額の話はご法度なのである。
正確に書いておけば、「今度のボーナスはいいだろうか?」「会社は儲かっているから、はずんでくれるのじゃないか?」程度の一般的な話をするのは差し支えないが、誰かにその人の給料やボーナスの額をたずねることは、どんな親しい間柄でもあり得ない。
これは、絶対と言っていい。
たとえば、仕事の後に、日本の居酒屋にあたるパブでビールやワインを飲みながら雑談する時でも、誰も個人の収入のことを話題にしない。
これはシティにおける不文律である。
入社した時に会社と取り交わす契約書にも、給与やボーナスなどの労働条件は、第三者に漏らしてはならないこと、そして、これに違反すれば罰則を科すことが明記されている。
「四千万ポンド(当時の換算レートで約八十五億円)の年収を得た」と新聞に報じられたことがある。
これは例外としても、年収一億円クラスはシティにはごろごろいる。
一方で、四十代でも年収が三万ポンド(五百七十万円)に届かない人もいる。
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